素敵な出会いを演出
彼は、ポツリと言った。
「気になる子がいるんだよね」彼のなによりの美徳は、正直なことである。
「二股かけてるってこと?」「そういうわけじゃないよ」彼の言葉を信じれば、ただ、気になっている、というだけで、まったくなんのアクションも起こしていない、という。
「じゃ、こんなとこで、ボヤボヤしてる場合じゃないでしょ」「いや、キミといるのも楽しいから」彼はシャアシャアと言った。
私は、一気にシラケた。
「バカバカしい、帰る、帰る」きらめく星空の、バカヤロー。
我が大学はオンナが少ない。
よって、オンナというだけで、あまり選り好みをしなければオトコには不自由しない、と言われている。
たとえ、私のような冴えないオンナでも、ボランティア精神にあふれた男性に巡り会えるはずだ。
敗者復活は厳しい、というウワサもあったが、まだまだ楽しい大学生活が送れる可能性は残っているだろう……。
T大はとかくスタートダッシュにつまずきがちな私に、ピッタリだったようだ。
公園を出て、ダラダラと宿舎へ戻る頃には、私は彼の今後の方針について、口を出すようになっていた。
「う〜ん……」ホンネでは、作ってもらうほうが好きなのかもしれない。
「野球見に行こう、とかは?ノッてくれそうじゃん」「うう〜ん……」「まずは食事に誘うって、どう?料理、上手なんだから」「だって、キミとダメんなって、じゃあすぐ次、ってわけにもいかないでしょ」彼は、身体が膨張する前の、まだ身軽なうちから、なかなかに腰の重たい人であった。
そこで、宿舎へ帰る一本道が、二股に分かれる分岐点に来た。
右へ曲がれば彼の部屋、左には私の部屋がある。
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